ICを使わずに、個別部品のみでヘッドホンアンプを作ると音が良いとか悪いとかいう話を聞いたので、ディスクリートヘッドホンアンプを制作してみました。

構成

全体の回路構成

ディスクリートでヘッドホンアンプを作るのは初めてだったので、一般的なオペアンプ回路の構成を踏襲しました。電源電圧は±11.2Vです。雑音を小さくするために、回路全体の抵抗値を低めに設定しました。

ディスクリートヘッドホンアンプの回路図
ディスクリートヘッドホンアンプの回路図

RV1とRV3は動作点の調整用の可変抵抗です。RV1は差動対に流れる電流値を調整するためのもので、出力のオフセット電圧がゼロに近づくように設定します。RV3は出力段(SEPP)に流れる電流値を調整するためのもので、所望の動作級となるように設定します。今回は私の手元にあるヘッドホン(ATH-M50)を接続し、適切な音量で音楽を流したときにA級動作をするように設定しました。

上記の回路図では大まかな回路構成が分かりにくいため、オペアンプ部をオペアンプ記号で書き直した回路図を以下に示します。

オペアンプ記号による等価回路図
オペアンプ記号による等価回路図

C5は入力から侵入してきた高周波ノイズを除去するためのものです。

出力部にはフェライトビーズを付けて容量性負荷による異常発振を防止しています。このフェライトビーズはアンプの出力抵抗との間でLPFを形成し、出力から侵入する高周波ノイズを除去する役割を兼ねています。抵抗R25はヘッドホンが接続されていないときに出力端子電圧をグランドレベルに落とす機能を担っています。

入出力のカップリングコンデンサは大容量の電解コンデンサと0.1μFフィルムコンデンサを並列接続することで、高域特性の改善を狙っています。

また安定性を高めるために、R5、R11を用いてボルテージフォロア回路の帰還率を下げています。

電源回路

電源は市販のACアダプタ(スイッチング電源)に前回の記事で紹介したノイズフィルタ付きレールスプリッタ基板を接続して供給します。トランスを使ったシリーズ電源よりも安価かつコンパクトな電源を実現できました。

ノイズフィルタ付きレールスプリッタ基板
ノイズフィルタ付きレールスプリッタ基板

ミュート回路

電源投入時のポップノイズを防止するために出力にトランジスタ式のミュート回路を付けました。1MΩの抵抗と22μFのコンデンサから成るRC直列回路の時定数により、電源投入後2秒程度でリレーがONします。リレーは941H-2C-12Dを用いました。

トランジスタ式のミュート回路
ミュート回路

制作

差動対のトランジスタ

ペア販売されている2SC2240BL
ペア販売されている2SC2240BL

入力部の差動対のトランジスタには2SC2240BLを使いました。低雑音かつβが大きいので入力段には最適のトランジスタだと思います。差動対のトランジスタはβの大きさがマッチしている必要があります。トランジスタを余分に買ってテスターで選別する方法もありますが、今回は秋葉原の若松通商でペア販売されているものを購入しました。

出力段のトランジスタ

TTA004BとTTA004B
TTC004BとTTA004B

出力段のトランジスタには、TTC004BTTA004Bを使いました。熱結合しやすいTO-126パッケージで、秋月電子等で入手可能です。

基板の設計と組付け

基板はKiCadで設計し、FusionPCBに発注しました。ボリュームノブが出っ張っていると手作り感が出てしまうため、100均で購入したL字金具でボリュームを少し奥まった位置に取り付けました。

ボリュームをL字金具で取り付け
ボリュームをL字金具で取り付け

ケースを閉めると見えませんが、デザイン的なアクセントのために基板にInkscapeで半自作したCLASS-Aロゴを付けてみました。

タカチYM-180
基板をタカチのYM-180に収めた

以上でディスクリートヘッドホンアンプが完成しました。次回の記事にはこのヘッドホンアンプの測定結果などを掲載します。

One thought on “ディスクリートヘッドホンアンプを作る(制作編)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。